つい先日までの、あの猛暑は一体何だったのでしょう。
気が付けば舞台そでに夏が去り、舞台中央には「秋」が長雨を連れて訪れていました。
「彼岸」を境にすべてのものが切り替わることを実感させるような冷たい雨が、あともう少しだけ葉に水分を供給し続ける木々を湿らせてゆきます。
あとほんの少し、紅葉の季節までのわずかな期間だけ。
種まきの「春彼岸」と、収穫の「秋彼岸」。
雪解け水の希望が2月の「雨水」だとしたら、どこかもの悲しさを伴う10月の「寒露」は物思いのひと時を与えてくれるものなのかもしれません。
そして、春のやわらかさとはまるで対照的な秋の陰(かげ)りが、小さな痛みのように胸を走り抜けていくようにも思えてしまいます・・・
ご先祖様を敬い感謝する祈りの行事でもある「彼岸」は、神仏ともに祀る風土の日本では、太陽神を信仰する「日願」にも通じているとも言われるようです。
お彼岸のお供え物として定番の「おはぎ」や「ぼたもち」は、適度につぶされたもち米とうるち米のバランスが絶妙な季節の食べ物ですが、思いがけない幸運が訪れることを「ぼたもち」と組み合わせて「棚からぼたもち」と最初に表現されたのは、一体どなたなのでしょうね。
厳しい夏を精一杯努力して過ごした者たちに、ささやかな幸運がきっとあるのだと思えるような・・・そんな他力本願も時には許されるような気がいたします。
文・写真 堀内利子(ハーバルセラピスト)
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