姪の“佳き日”に際し、迷ったけれど着物を着ることに決めた。
本来なら叔母である私は、黒留袖を着るべきなのだろうけれど訪問着を着ることにした。
かつて・・・結婚が決まり、両親に誂(あつら)えてもらった着物たち。
その一枚一枚に思い出が残る。
どうして25歳の私が、
こんなにも地味でシックな色を選んだのかわからないほど、訪問着も附下も色無地も、すべてがダークで落ち着いている。
「これなら70歳のおばあちゃんになっても着られるね」
そんな言葉を母と交わしながら選んだ遠い日。
それは菜種油(なたねゆ)色の一つ紋入りの色無地と、錆浅葱(さびあさぎ)色の附下と、老竹(おいたけ)色の訪問着。そのすべてが「和」の色であり、和の色でなければ表現できない微妙で繊細な独特の風合いを醸し出している。
爽やかな若竹が力強い若竹に成長し、やがて老竹になってもその色の変化とともに人生を楽しむ・・・
「もう結婚なんて2度としない」と最初の結婚にエネルギーを使い果たした姪が、この結婚で「老い竹」になるまで末永く幸せであってほしい。
心の奥にそんな願いを込めながら。
文・写真 堀内利子(ハーバルセラピスト)