幼いころ、祖母が見せてくれる「宝物入れ」が楽しみだった。ずいぶん整理をしたけれどと祖母は言いながら、箱の中には、
おしろいの入っていたケースや、小さな紅入れ、ガラスのブローチなどいろいろな小物が詰め込まれていた。
女性の多くは美しいものが好きだ。幼かった私も、その美しいものたちに
価値のあるなしに、うっとり見入り、訪ねる度に、「祖母の宝物入れ」をねだった。叔父は価値のないガラクタだと笑ったけれど、私には万華鏡を見る気持ちに似た昂揚があったのを覚えている。
祖母が亡くなり、数年が経った頃、叔父から不意に小荷物が届いた。季節の便りは交わすものの、遠方のそこに、子育て、仕事と追われる日々で、足も遠のいていた頃だった。
叔父の武骨な梱包だけれど、愛情込めて、それらはくるまれていた。
祖母の宝物入れは、今、私の宝物入れへと変わり、鏡台の奥に隠されている。
美しいものたちは、傍らで、私の身支度を見守っている。
F塚
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受け継がれたものを大切に・・・・
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